今は昔の30代半ばだった頃のこと。
横浜駅西口地下街に、足元にはサラサラと小川の流れる様な洒落た雰囲気の喫茶店があった。
たまには、打合せ等で利用する機会もあったが、そこでは、週に一度くらいだったろうか、トリオ・ロス・チカノスというトリオ・ロス・パンチョスの和製コピー・トリオが来て、パンチョスの名曲の数々を流していて、ぞっこん、聞き惚れていたことがあった。
最近でのふとした機会には、それらの曲を懐かしい気がして思い出していた機会があり、2、3日の前には、それらの歌詞を調べようとして検索していたのだが、何という偶然なことだろう、すぐ近くの厚木市文化会館での、かのトリオ・ロス・パンチョスのコンサートの日程と云うのが見つかってしまったのだった。
何という偶然。
彼らが大ブレークした時代というのは、1960年前後辺りだったのではなかったか…。
それが…。まさか、本家本物のパンチョスさんが、未だに現役で生きて活躍しておられるなどとは、一瞬の不思議で不可解な疑問と驚きが過ったものだった。
よくよく調べてみると、やはり、それなりにメンバーの入れ替え交代の変遷歴史があり、バトンタッチされながら今日に至っているとの由。なるほど、と納得。
ともあれ、本家本元を世代交代しながらも引き継いできているのだから、現代のロス・パンチョスとしての本物には違いない。曲は昔に横浜西口地下街の店で時々に聴いていた名曲がずらりなので懐かしい気がした。
この年になってくると、昔の元気が良かったころの思い出と云うものが懐かしくもなってくるものなのだろうか・・・。
最近では、このトリオ・ロス・パンチョスの曲を自宅でも、しばしば聴いていることがあり、また、ピアノでの練習曲としても取組み始めたりしていたものだった。
車の中での走行中には、いつも、それらの曲をCDから流していたので、助手席でうんざりする程に聞かされていた娘からは、「お父さん! ベサメムーチョの旋律が頭の中で、ずっとグルグルしてるよ!」と言われてしまったことがあった。
「いや、今は何とか、歌詞を覚えようとはしてるんだけど、やっぱり、難しいね。習ったこともないスペイン語だしね」との車中でのやりとり。
その、まさかの本家本元の公演というのが、たまたま、すぐ近くの厚木市内であるというのを知ったのが、偶然にも公演直前の2、3日前という、何という奇遇!
傍らに居た娘からは、「お父さん、それはやっぱり、行った方がいいよ! 私も行きたい!」と。急遽の思い立ちで検索してみると、ネット上ではチケットの購入が既に終了。
ローソンに足を運んではみたものの、既に扱い終了。当地の会館に足を運んではみたものの、やはり、既に終了。
かくなる上はと、当の会場となる厚木市文化会館の窓口に迄、公演前日に足を運んだのだったが、「前売り券は既に主催者側に返納したので、あとは当日券になります」との、つれない応答だった。
かくして、当日券をあてにして、娘と一緒に窓口に駆け付けたのだったものだった。
「よろしかったら、丁度のタイミングで、前列席でのキャンセルがありましたヨ!」との由。
最前列ブロック3列目の中央席で、言わば最上級のS席が均一料金で買えたのは、普段からクジ運の悪い小生にとっては、何というラッキーなことだろうかと、またもやの驚きであり、二人で喜んだものだった。
「周りは皆、昔し若かったオジさん、オバさん達ばっかだね? 高校生は見当たらないよね?」
「あったり前じゃん! 高校生なんて・・・。私だけ…だね(笑)」
演奏が始まると、何となく、カラダの内側からの反応を感じる様な心地良さで素晴らしかった。さすが、本家本元、と。
「お父さんのレパートリーがまた増えるかもネ!?」
「そうだね。 今まで、1、2曲だったのが、何曲か追加できそうかな(笑)」
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